タブリーズ・マララン産ペルシャ絨毯とは?「幻の産地」と呼ばれる理由
タブリーズ・マララン産ペルシャ絨毯とは?「幻の産地」と呼ばれる理由
これまでタブリーズ、イスファハン、ナイン、カシュガイ、マシュハドと、ペルシャ絨毯の産地についてご紹介してきましたが、今回はその中でも少し特別な存在——**タブリーズの中の産地「マララン(Maralan)」**についてお話しします。マララン産の絨毯は、実は現在では新しく作られることのない、いわば「幻の産地」なのです。
マラランとはどんな場所か
マララン(Maralan)は、イラン北西部・タブリーズの一角に位置する歴史ある地区です。19世紀末、ヨーロッパで産業革命による機械化が進んだことへの反動から、逆に手織り絨毯への需要が高まった時期がありました。マラランは、その需要に応える形で手織り絨毯づくりが盛んになった村のひとつです。
タブリーズを代表する文様である「マヒ柄(ヘラティ文様)」——中央の菱形の花を、魚を思わせる葉が囲む緻密な小紋様——を得意とし、その丁寧で緻密な仕事ぶりから、世界中で高く評価される産地となりました。
なぜ「幻の産地」と呼ばれるのか

マララン産絨毯の全盛期は1900年代から1960年代頃までとされています。ところが、物価や人件費の上昇など様々な事情により、2000年を迎える前にマラランでの絨毯生産そのものが終了してしまいました。現在、マラランと同じマヒ柄のタブリーズ絨毯の多くは、近郊のホイ(Khoy)という産地で作られており、マラランの名を冠した絨毯は、当時織られたヴィンテージ・アンティーク品としてしか市場に出回っていません。
つまり、今新しく「マララン産」の絨毯を手に入れることはできず、市場にあるのはすべて数十年前に織られた一点物ということになります。これが、マララン産絨毯が「幻の産地」「今は無き産地」と呼ばれ、コレクターの間で希少価値が高いとされる理由です。
マララン産絨毯の特徴
現行のタブリーズ産よりも緻密な織り
マララン産絨毯は、同じ50ラージ(後述)の現行タブリーズ産(ホイ産)と比較しても、より細かくしなやかな織り味を持つといわれています。当時の職人たちの手仕事の精度の高さがうかがえる特徴です。
独特の色合い
現行品とは使用する染料や仕上げの洗いの工程が異なるためか、マララン産の絨毯には独特の中間色的な色合いが見られます。この落ち着いた色味は、アンティークを好むヨーロッパのコレクターたちを中心に高く評価されてきました。新品でありながらどこかアンティークのような風合いを感じさせるのも、マララン産ならではの魅力です。
ラージ(Raj)とは?
タブリーズ系の絨毯の品質は、ノット(結び目)の数ではなく「ラージ」という単位で表されます。50ラージとは、7cmの幅の中に50個の結び目があるという意味です。中級グレードとされる50ラージから、さらに緻密な80ラージ程度までの上級品も存在し、数値が大きいほど繊細で高密度な織りになります。一枚の絨毯を織り上げるには、サイズにもよりますが数か月から場合によっては1年以上かかることもあり、マララン産のような細かい織りであればなおさら、多くの時間と手間がかけられています。
今回ご紹介する一枚:オールドタブリーズ・マララン産 50Raj
デコールワークスでは現在、実際にマラランで織られた貴重なヴィンテージの一枚をご紹介しています。
ペルシャ絨毯 オールドタブリーズ・マララン産 50Raj 145×100cm|1970年代 ヴィンテージ・マンチェスターウール&シルク

中央には大きなメダリオンが配され、その周囲を花や唐草を思わせる繊細な文様が埋め尽くす、タブリーズ・マララン産らしい密度の高い一枚です。マララン産の絨毯は比較的大きなサイズのものが多く作られたため、この145×100cmのようなコンパクトなサイズは、ヴィンテージ市場の中でも特に見つけにくいサイズとされています。ドイツで大切に使われたのち、日本の私たちのもとへとたどり着いたこの絨毯には、時代と国を超えて受け継がれてきた背景も含めて楽しんでいただけます。