マシュハド(マシャド)産ペルシャ絨毯の特徴とは?聖地が育てた気品ある逸品
マシュハド産ペルシャ絨毯の特徴とは?聖地が育てた気品ある逸品
タブリーズ、イスファハン、ナイン、カシュガイと、これまでペルシャ絨毯の代表的な産地をご紹介してきましたが、今回取り上げるのは、イラン北東部の聖地・マシュハド(マシャド)産の絨毯です。少し馴染みが薄い産地かもしれませんが、実はマシュハドは古くからペルシャ絨毯の名産地として知られ、独特の技法と気品ある意匠で高く評価されてきました。

マシュハドという街について

マシュハドは、イラン北東部・ホラーサーン州に位置する古都です。イスラム教シーア派にとって重要な聖地であり、街の中心にはイマーム・レザー廟という壮麗な廟があります。
その街は、長い歴史を誇る絨毯織りによって、やがて手織り絨毯の産地としても有名になりました。
マシュハド産絨毯の特徴
珍しい「二つの結び方」の共存 (トルコ結びとしても知られる)
多くの産地では、ペルシア結び(非対称結び)かトルコ結び(対称結び)のどちらか一方が用いられますが、マシャッドでは歴史的にこの二つの結び方が並存してきたという珍しい特徴があります。タブリーズの職人がもたらしたトルコ結びの技法と、もともとイラン中心部に伝わるペルシア結びが、マシュハドの地で共に受け継がれてきたのです。
この街の著名な工房では、イラン屈指の素晴らしい絨毯が数多く制作されてきました。その多くは「60ラジ」から「100ラジ」という緻密な織り密度で仕上げられています。特にマシュハドの街では、深みのある赤色が際立つ絨毯が作られてきました。「アムーグリー(Amooghli)」や「ウルギー(Urughi)」といった工房は非常に有名で、マシャッド産絨毯といえば真っ先にその名が挙がるほどです。
堂々としたメダリオンと緻密な花文様
マシュハド産絨毯は、中央に据えられた堂々としたメダリオンと、その周囲を埋め尽くす繊細な花文様の組み合わせが特徴です。フィールド全体に生命力あふれる植物文様が隙間なく描き込まれ、見る角度によって表情を変える深みのある色彩が、優雅で重厚な印象を生み出します。
マシュハド周辺の産地との関係
マシュハドの南に位置するムード(Mood)や、イラン南東部のビールジャンドといった地域でも、マシュハドと関連の深い絨毯が織られています。


- ムード産:ヘラティ文様(後述)がよく見られ、中央にメダリオンを配したものと配さないものの両方が存在します。ベージュを基調に淡い赤や青を差し色とした「ムード・マヒ」と呼ばれるタイプでは、星形のメダリオンが特徴的です。
- ビールジャンド産:タブリーズのマヒ文様によく似たヘラティ文様を中心にデザインされることで知られています。
これらの周辺産地を含めて「マシュハド系」と捉えると、ホラーサーン地方全体の絨毯文化の奥深さが見えてきます。
代表的な文様:ヘラティ文様
マシュハド系の絨毯を語るうえで欠かせないのが、ヘラティ文様です。中央に菱形のメダリオンを配置し、小魚を思わせる文様が周囲を彩ることから「マヒ(魚)文様」とも呼ばれます。全体的に落ち着いた色使いでまとまるため、どのようなインテリアにも自然と調和するのが魅力です。タブリーズ産でもよく見られる文様ですが、マシュハド系の絨毯ではより落ち着いた色調と組み合わされることが多く、荘厳な雰囲気を演出します。